高梁市「VentVert」が開業—福祉×観光の新拠点

旧宇治農村公園が複合施設として再始動—「VentVert」誕生の意義

2025年4月6日、岡山県高梁市の旧宇治農村公園が複合施設「VentVert(ヴァンベール)」として生まれ変わりました。フランス語で「緑の風」を意味する施設名には、自然との調和、リラックス、地域交流といった理念が込められており、高梁市の新たな観光拠点としての期待が寄せられています。

かつてこの地は、1996年に開園した農村型リゾート施設として、そば打ちや田植え体験などの農業体験が人気を集めていました。しかし新型コロナウイルスの影響で休業状態が続き、遊休資産となっていたこの公園を、社会福祉法人P.P.P.がリノベーション。サウナやキャンプ、宿泊機能を備えた複合型観光施設として再生させました。

高梁市といえば吹屋の町並みや備中松山城といった歴史的遺産が中心でしたが、ヴァンベールは近年のサウナ人気や”ととのう”文化、ウェルネスツーリズム需要に応える新しい選択肢として位置づけられています。岡山県内では牛窓の「TARI」など先駆的なプライベートサウナ施設が登場していますが、高梁市もこうした観光トレンドにしっかり呼応する形です。

木村

木村:岡山県内でサウナ×宿泊の複合施設が増えているのは、ウェルネス観光の市場が確実に拡大している証拠ですね。高梁市は歴史遺産に強みがある一方、新しい観光体験の受け皿が少なかったので、ヴァンベールの登場は市内の観光地図を塗り替える可能性があります。倉敷や総社からのアクセスも悪くないので、県中部エリアの週末観光の新しい選択肢として機能するはずです。

遊休資産の再活用—地域課題への現実的な解答

もともと旧宇治農村公園は、地域に開かれた農業体験施設として親しまれていました。しかし長引くコロナ禍で休業を余儀なくされ、廃止・遊休化した公有地の再活用という課題を抱えることになりました。これは高梁市だけでなく、岡山県内の多くの市町村が直面している共通の問題です。

こうした中、社会福祉法人P.P.P.が再活用プロジェクトに名乗りを上げました。同法人は倉敷市に本部を持ち、障害福祉分野で実績を持つ組織です。地域に根ざした「P.P.P.オールスターズ!布寄」とともに、この施設の管理・運営を担当することで、観光施設の再生と福祉事業の融合という新しいモデルを実現しています。

特筆すべきは、同法人が運営するB型就労支援事業所「しいたけハウス」で栽培された椎茸がカフェメニューに使われるほか、施設スタッフとして障害を持つ方々が接客・調理・清掃業務に従事している点です。これは単なる「CSR活動」ではなく、施設の経営とコミュニティ作りの根幹に組み込まれた設計といえます。

高梁市内には複数の障害福祉施設がありますが、その事業所が観光施設の運営に携わることで、地域内の産業連携と雇用創出が同時に実現されるという、地方創生の理想的な形が見えてきます。

施設構成と体験価値—ホテル、サウナ、カフェ、キャンプの複合設計

ヴァンベールは単機能の宿泊施設ではなく、複数の体験を組み合わせた複合型観光拠点として設計されています。以下、各機能の特徴を見ていきましょう。

ホテル機能

ログハウス中2階に最大8名の宿泊が可能で、クイーンベッド4台を完備。グループ旅行や同窓会、小規模な企業研修にも対応しやすい仕様となっています。完全1棟貸切のプライベート空間が売りで、各宿泊者にはランタンが貸し出されるなど、ラグジュアリー体験も工夫されています。

カフェ・ダイニング

1階に併設された調理室とカフェスペースでは、「地産地消」が謳われています。具体的には、「しいたけハウス」産の椎茸が定番食材として活躍し、農業体験を通じた来訪客・スタッフ・地域住民の「三方良し」の交流が企図されています。

バレルサウナ

地元木材を使用した本格仕様のバレルサウナは、岡山県内で増えているサウナ施設のトレンドに乗る形で導入されました。牛窓「TARI」や児島「fuu sauna」など、県内各地で展開されるバレルサウナの事例に続く形です。地元素材とロウリュ体験の組み合わせで、ユーザー体験を高める工夫がなされています。

キャンプエリア

敷地内に2区画のキャンプサイトを備え、ギアレンタルも可能です。今後ツリーハウスや木漏れ日テラスのオープンも予定されており、アウトドア初心者から愛好家まで幅広い層に対応する拡張性があります。

木村

木村:宿泊・サウナ・カフェ・キャンプが1か所で完結するのは、体験の連続性という観点で非常に優れています。特に「ととのう→食事→休息→キャンプ」という一連の流れが一つの施設内で完結するのは、宿泊観光客にとって大きな魅力です。岡山県内には観光地が点在していますが、こうした滞在型施設が増えることで、県全体の観光の質が底上げされます。

総社・倉敷圏との位置づけ—アクセスと秘境感のバランス

高梁市は倉敷市から北西へ約50km、総社市からも北へ向かった山越え地帯に位置します。岡山空港からは約1時間15分、岡山自動車道賀陽IC経由で約45分が目安です。

この立地が意味するのは、アクセスの良さと秘境感のバランスです。倉敷のデニム産業、総社の工業地帯とは異なる、緑と自然に身を任せる癒し体験を求める都市圏ユーザーにとって、程よい距離感と非日常性が合致しています。

また、倉敷・総社圏から高梁市へのドライブルートは、自然景観に恵まれた道のりでもあります。週末の小旅行として、あるいは連休の拠点施設として、ヴァンベールは県中部エリアの周遊観光の新しいハブとなる可能性を持っています。

特に総社市からは国道180号線経由で約30分程度。普段の生活圏からほんの少し足を伸ばすだけで、サウナと自然に囲まれた非日常空間に到達できるのは、地元住民にとっても魅力的な選択肢です。

社会的意義と今後の展望—福祉・観光・農業の複合モデル

ヴァンベールの立ち上げにおいて、公式資料では「地域に新たな活気をもたらしたい」という決意が明確に示されています。これは以下の具体的な施策に反映されています。

  • 障害者雇用の推進と社会参加の実現
  • 地産食材(椎茸など)の流通創出
  • 地域観光スポットとの連携
  • スタッフ・宿泊客・地域住民の交流イベント企画

高梁市は人口減少・高齢化が進む地域ですが、こうした福祉・観光・農業の複合型施設は、雇用・所得・来訪者増という複数の波及効果をもたらす可能性を秘めています。

また、今後の施設拡張としてツリーハウスや木漏れ日テラスのオープンも予定されており、段階的に体験価値を高めていく方針が示されています。こうした継続的な投資と改善が、地域に根ざした持続可能な観光モデルを形成する鍵となるでしょう。

予約はLINE公式アカウントやInstagram DMで受け付けており、SNSを活用した情報発信・集客にも力を入れています。問い合わせ先は以下の通りです。

項目 詳細
施設名 VentVert(ヴァンベール)
住所 岡山県高梁市治町穴田3487-3
電話 0866-29-3337(担当:森田徹)
メール ventvert.theforest@gmail.com
Instagram @ventvert_theforest
木村

木村:ヴァンベールのような施設は、単に「新しい観光スポットができた」という以上の意味を持っています。遊休資産の活用、福祉事業との連携、地産食材のビジネス化、そして都市圏ユーザーのウェルネス需要への対応——これらが有機的に結合されているのが、地方創生の実験的な試みとして非常に興味深いです。

岡山県全体で見ても、こうした複合型の地域再生モデルは今後ますます重要になります。倉敷・総社・高梁という県中部エリアの連携が深まれば、観光の周遊性も高まり、各市町村にとってプラスの効果が生まれるはずです。今後の施設拡張や地域交流イベント、そして実際の宿泊・来訪者の反応を通じて、高梁市における観光・福祉・地域活性化の新しいモデルとしてどう機能するかに注目しています。

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