2025年農業倒産が過去最多82件に―岡山の先進事例から見る日本農業の課題

農業倒産が過去最多を記録―2000年以降で初の80件超え

株式会社帝国データバンクが発表した「農業」倒産動向の調査結果によると、2025年の農業分野における倒産件数は前年比7.9%増の82件に達し、2000年以降で初めて80件を突破、過去最多を更新したことが明らかになりました。負債総額も373億8700万円に上り、2011年、2022年に次ぐ過去3番目の規模となっています。

この背景には、肥料や飼料価格の高騰、さらには猛暑や豪雨といった天候要因など、外部環境に大きく左右される農業経営の脆弱性が浮き彫りになっています。不作や品質不良が相次ぐ中、コスト増を販売価格に転嫁できない構造的な問題が、農業事業者を追い詰めている実態が浮かび上がってきました。

木村

木村のコメント

農業倒産が過去最多というニュースは、一見すると地方経済にとってマイナスに感じられますが、これは農業の法人化が進んだことの裏返しでもあります。個人事業から法人化することで、より大規模な経営や取引が可能になる一方、天候リスクや市場価格の変動に対する耐性が試される時代になったということです。岡山県内でも先進的な農業法人が増えていますが、持続可能な経営モデルの構築が急務だと感じています。

※集計期間:2000年1月1日~2025年12月31日
※集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産

野菜作農業が最多28件―猛暑と豪雨が品質と収益を直撃

業種別の内訳を見ると、「野菜作農業(きのこ類の栽培を含む)」が28件と最も多く、こちらも過去最多を記録しました。猛暑や豪雨災害の影響により、野菜の生産量が減少し、品質も低下。その結果、市場での販売価格が下落し、収益性の悪化を招いたことが倒産増加の主因となっています。

一方、2024年に過去最多の6件を記録した「米作農業」は、2025年には5件に減少しました。猛暑による米不作の影響はやや落ち着きを見せたものの、代表者の病気や死亡に伴い事業継続を断念せざるを得ない企業も出ています。後継者不足という農業が抱える構造的課題が、ここにも表れています。

スマート農業の光と影―岡山県笠岡市のサラが示した教訓

近年、最新技術を活用した「スマート農業」への期待が高まっています。しかし、その先駆け的存在だったサラ(岡山県笠岡市)が2025年12月12日に民事再生法の適用を申請したことは、業界に大きな衝撃を与えました。

サラは太陽光利用型設備を活用し、国内最大級の菜園を運営していました。ファンドからの多額の出資を受け、設立から5年で黒字化を達成するなど、順調なスタートを切っていました。しかし、その後の猛暑の影響で野菜の生産量は計画を大きく下回り、設備投資分の借入金返済が重い負担となりました。最終的に負債額は約157億円にまで膨らみ、経営破綻に至っています。

木村

木村のコメント

笠岡市のサラのケースは、技術革新だけでは農業の課題を解決できないことを示しています。初期投資が大きいスマート農業では、気候変動などの予測困難なリスクに対するバッファーをどう確保するかが重要です。岡山県は晴れの国として知られていますが、それでも近年の異常気象は無視できません。持続可能な農業経営には、技術とリスク管理の両立が不可欠だと改めて感じました。

畜産農業の苦境―酪農業と肉用牛生産業が直面する構造的課題

畜産分野でも厳しい状況が続いています。乳牛を飼育して生乳を生産する「酪農業」は10件の倒産が発生し、過去最多となりました。このうち7社は、7月24日に民事再生法の適用を申請したファーマーズホールディングス(岡山県倉敷市)とその関係会社が占めています。

また、「肉用牛生産業」は2024年の3件から5件増加し、8件に達しました。物価高の影響で、一般家庭では豚肉や鶏肉に比べて牛肉の消費が伸び悩んでおり、需要が低下しています。飼料などのコスト増に対して、販売価格への転嫁が追いつかない状況が続いています。

業界関係者は「国外では和牛の需要が高いため、海外向けの販売ルートを確保できる企業が生き残るだろう」と指摘しており、今後も業界の淘汰が進むと見られています。

農業分野全体に共通する倒産増加の背景として、価格転嫁の難しさが大きな要因となっています。農業は他の産業とは異なり、販売価格が市場価格に大きく左右されるため、コスト増と連動しないケースが頻繁に発生します。物価高や肥料・飼料などのコスト上昇分を価格に反映できていない現状が、経営を圧迫しています。

九州が全体の28%を占める―法人化の進展と淘汰の加速

地域別に見ると、「九州」が23件で全体の28.0%を占め、最も倒産が多い地域となりました。九州経済連合会が地域産業として農業振興を強化していることや、北海道のような広大な農地とは異なり、小規模な土地を集約化する動きが進んだ結果、個人農家が集まって法人を設立するケースが増加しています。

九州農政局によると、2025年の農業法人数は2020年と比較して6.8%増加しています。法人化することで、大手メーカーや小売業者との専属契約が可能になる、肥料などをまとめて安価に仕入れられるといったメリットがあります。

しかし、猛暑や豪雨、病害などの外部要因によって収益性が悪化する中、法人数が増加した結果、一定数が淘汰されたことが同地域での倒産増加の要因と考えられます。特に「施設野菜作農業(きのこ類の栽培を含む)」では、全8件のうち3件が九州地域で発生しています。

ビニールハウスなどの施設を新設する際には国からの補助金を受けられる場合もありますが、「補助金を最初から当てにして参入してくる業者もある」との指摘もあります。短期間での収益化は困難であることから、先行投資分を回収できないまま資金繰りに行き詰まるケースが見受けられました。

まとめ―持続可能な農業経営に向けた課題と展望

2025年の農業倒産が過去最多の82件に達した背景には、気候変動による生産リスクの増大、コスト上昇と価格転嫁の困難さ、そして法人化の進展に伴う競争激化という複合的な要因が存在します。特に岡山県では、笠岡市のサラや倉敷市のファーマーズホールディングスといった大型倒産事例が発生しており、先進的な取り組みを行っていた企業でさえ、外部環境の変化に対応できない現実が浮き彫りになりました。

一方で、農業の法人化自体は決して否定されるべきものではありません。むしろ、規模の経済を活かした効率的な経営販路の拡大雇用の創出など、多くのメリットをもたらす可能性を秘めています。重要なのは、初期投資の規模と回収期間のバランス、気候リスクへの備え、そして市場価格の変動に耐えうる財務体質の構築です。

また、国内市場の縮小を見据え、海外市場への展開も重要な選択肢となります。特に和牛などのブランド力のある農畜産物については、海外での需要が高く、販路開拓が生き残りの鍵となる可能性があります。

木村

木村のまとめコメント

今回の調査結果から学ぶべきポイントは3つあります。

①リスク管理体制の構築:気候変動や市場価格の変動を前提とした経営計画と、十分な資金バッファーの確保が不可欠です。

②段階的な投資戦略:補助金や初期投資に頼りすぎず、収益性を確認しながら段階的に規模を拡大する慎重なアプローチが重要です。

③多角的な販路開拓:国内市場だけでなく、海外市場やEC販売など、複数の販路を確保することでリスク分散が可能になります。

岡山・倉敷・総社エリアは農業が盛んな地域です。この地域の農業事業者が持続可能な経営を実現し、地域経済を牽引していくためには、これらの課題に真摯に向き合い、実効性のある対策を講じていくことが求められています。

参照元:株式会社帝国データバンク「農業」倒産動向調査

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