45年間、倉敷市民の「泳ぐ場所」がついに幕を閉じる
倉敷市新田に位置する倉敷市屋内水泳センターが、2025年3月31日(月)をもって閉館します。1981年の開設以来、実に45年間にわたり市民のレジャー・健康づくり・競技スポーツを支えてきた施設が、老朽化を理由にその役割を終えます。
岡山・倉敷エリアに暮らす人間にとって、「プールといえばここ」という存在感を持つ施設でした。年間利用者は約12万人。単純計算で毎日300人超が訪れていた計算になります。その規模感からも、地域への影響の大きさが伝わってきます。
施設のスペックと45年の歩み
センターはもともと1981年、「県倉敷総合屋内水泳センター」として開設されました。2007年に岡山県から倉敷市へ譲渡され、以降は市が運営を担ってきました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 規模 | 地上3階・地下1階、延べ約5,600平方メートル |
| プール | 50m(日本水泳連盟公認)、25m(同公認)、15m |
| 年間利用者 | 約12万人 |
| 所在地 | 倉敷市新田 |
日本水泳連盟公認の50mプールを備えているのは、全国的にも決して多くはありません。地方都市でありながら、このスペックを長年維持してきたことは特筆に値します。
ソウル五輪金メダルへの「助走」となった記録の舞台
この施設が全国的な注目を浴びたのが、1988年6月のことです。ソウルオリンピック競泳日本代表選考会の会場に選ばれ、のちに初代スポーツ庁長官・参院議員を務めることになる鈴木大地選手が、男子100メートル背泳ぎで55秒32の新日本記録を樹立しました。
この倉敷での快走が弾みとなった鈴木選手は、同年のソウル五輪本番で金メダルを獲得。日本水泳界16年ぶりの金メダルという快挙でした。「倉敷でその記録が生まれた」という事実は、この施設の歴史的価値を語る上で欠かせないエピソードです。
近年も水球全日本ユース選手権「桃太郎カップ」(毎年12月開催)など、全国規模の競技大会の舞台として活用されてきました。単なる市民プールにとどまらない、競技水泳の拠点でもあったのです。
閉館前に「思い出」を持ち帰れる取り組みも
施設を運営する指定管理者「コンソーシアム」(市スポーツ振興協会などで構成)は、閉館に向けて館内2カ所に寄せ書きスペースを設置(28日から)。45年の歴史を知る利用者たちが、思い出のメッセージをつづっています。
さらに、施設の庭先に咲くパンジーやスイセンなどの花は無料で持ち帰り可能(スコップと容器は持参が必要)。「物」として思い出を持ち帰れるこの取り組みは、長年通い続けた利用者への温かい配慮といえます。
玉島乙島に住む平井史隆さん(72)は「足腰の健康維持のため週3回通っている。閉館は寂しいが、新施設が完成したらまた泳ぎたい」と話しています。
佐倉衡平所長も「閉館が決まった後も客足が途絶えず、心から感謝している。最後の思い出づくりを楽しんでもらいたい」とコメント。長年愛された施設の最後にふさわしい言葉です。
最終日(3月31日)の情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 最終営業日 | 3月31日(月) |
| 営業時間 | 〜午後7時30分 |
| 利用料(大学生以上) | 220円 |
| 利用料(高校生) | 110円 |
| 利用料(中学生以下) | 55円 |

木村:「220円でオリンピック選考会が開かれたプールに入れる最後のチャンス、というのは相当レアな体験ですよ。岡山・倉敷在住の方は、ぜひ最終日に足を運んでみてください。」
次のステージへ――新施設と跡地活用の展望
倉敷市屋内水泳センターの役割は、新施設へと引き継がれます。現在、市水島緑地福田公園(福田町古新田)内に建設中の新屋内プールは、以下のスペックが予定されています。
- 規模:鉄筋一部鉄骨鉄筋3階、延べ約7,700平方メートル(現施設比約38%増)
- プール:50mをはじめ複数プールを整備
- 完成予定:2027年2月
一方、旧センターの跡地については、倉敷市が中央図書館・市文化交流会館など市有5施設を移転統合する複合施設を新築する計画を進めており、2029年度の利用開始を目指しています。水泳の拠点としての役割を終えた後も、地域の文化・交流の核として再生する構想です。
岡山・倉敷エリアの都市機能の「集約・更新」という大きな流れの中で、この施設の閉館と跡地活用は一つの象徴的な出来事といえます。

木村:「45年間で約12万人/年が利用してきたプールが閉まるのは、単なる施設の廃止ではなく、地域のライフスタイルの節目だと思います。新施設は規模も広がり、跡地は複合施設へと生まれ変わる。喪失感と期待感が同居するこのタイミングに、倉敷市のまちづくりの本気度が問われていると感じます。岡山・倉敷エリアをフィールドにしている身として、引き続き注目していきます。」



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