山田養蜂場が蜂蜜の咳止め成分を世界初解明―岡山発の研究

岡山発の研究が世界の常識を科学的に証明

岡山県苫田郡鏡野町に本社を置く山田養蜂場が、2025年9月23日から27日にかけてデンマーク・コペンハーゲンで開催された世界最大級の国際養蜂会議「Apimondia 2025」において、蜂蜜に含まれる咳止め成分を特定・規格化したことを学術発表しました。この発表は、古くから民間療法として世界中で利用されてきた蜂蜜の咳止め効果を、初めて科学的に証明した画期的な成果として、国際的な注目を集めています。

山田養蜂場健康科学研究所の谷央子研究員が率いた研究チームは、理化学研究所および東京理科大学との共同研究により、10年にわたる研究の末、蜂蜜に含まれる2つの咳止め成分を特定しました。その成分は、新規化合物「メルピロール」と、咳止め効果が新たに判明した既知化合物「フラジン」です。

木村

木村のコメント

岡山県の企業が世界的な学会で注目を集めるというのは本当に誇らしいことですね。10年という長期間にわたる地道な研究が、ついに実を結んだわけです。「おばあちゃんの知恵」として語り継がれてきた蜂蜜の咳止め効果が、最先端の科学によって裏付けられた。これは岡山の研究開発力を世界に示す大きな一歩だと思います。

10年の研究で明らかになった蜂蜜の秘密

蜂蜜が咳や喉の痛みに効果的であることは、世界中の医療現場や民間療法で長年利用されてきました。しかし、なぜ効くのかどの成分が作用しているのかについては、これまで科学的に完全には解明されていませんでした。

山田養蜂場の研究チームは、この謎を解明するため、蜂蜜の成分を徹底的に分析しました。その結果、以下の2つの成分が咳止め効果に関与していることを突き止めました。

  • メルピロール:今回初めて発見された新規化合物。ピロリルピリドインドール・アルカロイドという複雑な構造を持つ天然物質。
  • フラジン:既知の化合物だが、咳止め効果があることは今回初めて判明。

研究チームは、モルモット(ギニアピッグ)を使った咳誘発モデルによって、これらの成分の効果を検証しました。酸とカプサイシンによって咳を誘発させ、メルピロールとフラジンを投与した群と対照群を比較したところ、投与群では咳の回数が有意に減少し、その効果は市販の鎮咳薬「デキストロメトルファン(DM)」に匹敵するものでした。

さらに重要なのは、この咳止め効果が単なる喉の保湿によるものではなく、より根本的なメカニズムによるものであることが示されたことです。

従来の咳止め薬とは異なる新しいメカニズム

今回の研究で明らかになった最も興味深い点は、メルピロールとフラジンの作用機序です。研究により、これらの成分は一酸化窒素(NO)を介した咳反射の抑制というメカニズムで作用していることが判明しました。

従来の多くの咳止め薬は、中枢神経系の麻薬受容体に直接作用することで咳を抑制します。一方、メルピロールとフラジンは、NOシグナル伝達経路を通じて咳を抑制するため、従来の薬とは異なるアプローチで効果を発揮します。

このメカニズムの違いは、以下のような利点をもたらす可能性があります。

特徴 従来の咳止め薬 メルピロール・フラジン
作用機序 麻薬受容体に直接作用 一酸化窒素経路を介して作用
副作用 眠気、依存性のリスク 天然由来で副作用が少ない可能性
対象 年齢制限あり 1歳以上の子どもにも安全(蜂蜜の場合)

この新しい作用機序の発見は、副作用の懸念が少ない次世代の咳止め薬開発への道を開く可能性があります。

世界の舞台で評価された岡山の研究力

今回の学術発表が行われた「Apimondia(アピモンディア)」は、1895年に設立された国際養蜂協会連合が主催する世界最大級の養蜂会議です。2年ごとに開催され、世界各国から養蜂家、研究者、企業が集まり、養蜂技術の発展、ミツバチの保護、蜂産品の品質向上について最新の研究成果を発表します。

山田養蜂場は、1999年の第36回大会以来、継続的に学術発表を行ってきた日本を代表する企業として知られています。2025年の第49回大会では、谷研究員によるポスター発表後に活発な質疑応答が交わされ、蜂蜜の咳止め効果を活かした商品開発に対して、世界各国の出席者から高い関心が寄せられました。

この研究成果は、2023年9月に科学雑誌『Journal of Agricultural and Food Chemistry』に掲載されており、国際査読付きジャーナルへの掲載により、科学的信頼性と国際的な重要性が認証されています。

木村

木村のコメント

国際的な学術雑誌に掲載され、世界的な会議で発表される。これは岡山県の企業として本当に誇らしい成果です。地方に拠点を置きながらも、世界レベルの研究開発を続けている姿勢には学ぶべきものが多いと感じます。

2026年商品化に向けて―医療・健康食品業界への影響

山田養蜂場は、メルピロールが規格化された蜂蜜の2026年での商品化を目指しています。この規格化により、メルピロールを安定して医薬品や機能性食品に応用することが可能になります。

蜂蜜による咳止めの科学的な裏付けは、以下のような市場機会を生み出す可能性があります。

期待される応用分野

  • 子どもへの安全な代替手段:1歳以上の子どもに安全とされている蜂蜜が、医療現場での使用を視野に入れた咳止め成分として確立される可能性
  • 天然由来の医薬品開発:従来の合成鎮咳薬に代わる、副作用の少ない天然由来の咳止め薬としての医薬品化
  • 機能性食品:鎮咳効果を明確に謳える健康食品や栄養補助食品の開発
  • 安全性プロフィールの向上:一酸化窒素経路を使う独自のメカニズムにより、従来の麻薬系咳止め薬とは異なる安全な選択肢

特に注目されるのは、小児への応用です。現在、市販の咳止め薬には年齢制限があるものが多く、親としては子どもの咳に対して安全で効果的な選択肢を求めています。蜂蜜(1歳以上)は昔から使われてきた安全な食品であり、その効果が科学的に証明されたことで、医療従事者も自信を持って推奨できるようになるでしょう。

岡山県の地域ブランドとしての価値

山田養蜂場は、1948年に創業者・山田政雄によって徳島で創業されました。当初は心臓疾患を持つ娘の健康に役立てたいという願いからローヤルゼリーの研究を始め、その後1958年には日本で初めてチューブ詰めはちみつを生産するなど、養蜂産業に革新をもたらしてきました。

現在、岡山県苫田郡鏡野町に本社を置く同社は、グループ全体で548億円の売上を誇る養蜂業界の大手企業に成長しています。2006年には「みつばち健康科学研究所」を完成させ、ミツバチ産品や天然素材の研究開発を積極的に進めてきました。

岡山県は、ミツバチ産業と関連する研究開発の拠点として、今後さらに注目されることが期待されます。山田養蜂場のように、地元の自然環境を活かしながら世界レベルの研究を展開する企業が根ざしていることは、地域経済と地域ブランド形成にとって重要な資産です。

2026年の商品化に向けた動きが加速すれば、岡山県産の蜂蜜がさらに国際的な注目を集める可能性があります。同時に、地域の観光資源としても、「蜂蜜研究の最先端地」としての価値が高まるでしょう。倉敷や総社を訪れる観光客にとっても、岡山県の企業が世界で活躍しているという事実は、地域の魅力を高める要素になります。

まとめ―科学が証明した伝統の知恵、そして岡山の未来

山田養蜂場による今回の研究成果は、古くから民間療法として伝わってきた蜂蜜の咳止め効果を、初めて科学的に証明したという点で画期的です。新規化合物「メルピロール」と既知化合物「フラジン」の特定、そして一酸化窒素を介した作用機序の解明は、10年にわたる地道な研究の賜物といえます。

この成果がもたらす影響は多岐にわたります。

  • 天然由来で副作用の少ない咳止め成分として、医薬品や機能性食品への応用が期待される
  • 子どもにも安全な咳止め薬としての選択肢が広がる
  • 岡山県の地域ブランドとして、養蜂産業と研究開発の拠点としての価値が高まる
  • 国際的な学会での発表により、日本の研究力が世界に示された

2026年の商品化に向けて、今後の展開から目が離せません。

木村

木村のコメント

「おばあちゃんの知恵」が最先端の科学で証明される―これほど素晴らしいストーリーはありませんね。岡山県から世界に発信されるこの研究成果は、地域の誇りです。伝統と科学が融合し、新しい価値を生み出す。これこそが、これからの地方企業が目指すべき姿だと思います。岡山・倉敷・総社の地域全体が、こうした企業の存在を誇りに思い、応援していくことが大切ですね。2026年の商品化を楽しみに待ちたいと思います。

関連リンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました